新事業開発プログラム 4)1日ワークショップ
新事業創造に向けた「1日ワークショップ」
新事業創造で最も大切なのが、「誰のどの課題を解決するのか?」という疑問に答えることです。
実は多くの会社で、この顧客(WHO)と課題(WHAT)を明確にしないまま、「こんなモノがあったら嬉しいはず」または「これはスゴイだろう」という憶測のまま、検討が進むことが多いのです。
「1日ワークショップ」では、この WHO を WHAT をあらためて捉え直し、相互にレビューします。
とてもシンプルですが、大きな気づきを得ることができるプログラムです。
基本的な時間割
午前:イノベーションに関する講義(約2時間)
午後:参加者の事業アイデアをレビュー(2~4時間)
レビュー方法1:参加者同士が、持ち寄った事業アイデアをレビュー
講義の後、参加した個人が事業アイデアを相互にプレゼンし、参加者同志が対話しつつ、練り上げる。その結果を講師がレビューする
参加者同士でチームで対話することで、WHO/WHATを互いに確認し、またアイデアを出し合い、練り上げることができる
その検討結果をプレゼンし、講師がレビューすることで、さらにレベルの高い気付きを得て、また事業化における新たな検討ポイントを得ることができる
レビュー方式2:事業アイデアのプレゼン(ピッチ)を講師がレビュー
新規事業のアイデアコンテストなどに活用
実施事例
総合電機、情報通信企業、機械メーカー、商社、などさまざまな業種にて実施してきました。
下の事例では、研究機関での実施事例を紹介します。
産業技術総合研究所での実施事例
つくば市にある日本を代表する研究機関である「産業技術総合研究所」は、研究成果を事業に繋げる「イノベーションスクール」を毎年開催しています。
私はそのスクールの一環として、イノベーションの講義と、研究成果の事業化アイデアの評価を、担当しました。
参加者は、ほぼ全員が博士号を持つ研究者。丸1日のプログラムで、午前が講義、午後が各自のアイデアの評価(チーム代表を設定)という形で進めました。
参加者の満足度は非常に高かく、以下のようなコメントを多数いただきました。(ごく一部を紹介)
-
本講義の中で、ペルソナという考え方を初めて聞いて、ペルソナを具体化するとアイデアが次から次に出てきて、今までにないおもしろさを感じることができました。自分たちの専門技術も曖昧な私たちでさえ、ペルソナを描くと、事業コンセプトの設計を行うことができました。もちろん、実際に企業で行われている事業コンセプトの設計よりも遥かに現実離れしていましたが、個々人で異なる意見がいつもより多く出ているように感じました。
そして、演習後に河瀬さんが、これがコネクティングドットですというお話をされたとき、自然と自分たちがコネクティングドットしていたことに驚きを感じました。実際、テーマを絞った後、他の人の研究テーマと組み合わせられないかといった議論がグループ内で起こりました。
-
私はこれまで新しい・革新的な技術を開発しさえすれば、製品としてのイノベーションもそこから自然に発生するのではないかと考えていました。しかし今回の講義において、技術のみではイノベーションは生み出せない事が良く分かったと思います。マーケティング的な視点について今後、もっと積極的に学んでいく必要が有ると感じました。新規事業化についての演習では私たちの班は体温発電によるスポーツ用メガネを提案しましたが、これは私にとっては実際に「楽しい」と思える製品になったので、その事は非常に良かったと思います。またペルソナの特定やユースケースの想定に関しては、私は当初は、皆教育的背景の近い同年代の研究者なので自分と同じような意見ばかりが出るだろうと考えたのですが、実際に議論を行った結果では、予想外に自分の想定した用途とは異なる意見が多く出され、認識を新たにしました。この事からは、事業コンセプトの設計の際にいかに多くの視点からの意見が必要であるかを、学ぶ事が出来たと考えています。
-
河瀬氏の、正解を押し付けるのではなく「何が正しいかなんて誰にも分からない」というスタンスは、こちらの気持ちをとても楽にしてくれました。グループワークでも、穴だらけの事業コンセプトに苦言を呈すこともなく、各グループの良いところを拾い上げて終始和やかな雰囲気で終わる事ができました。自分たちの知識が追いついていない部分やロジックの詰めが甘い部分というのは、大勢の前で指摘されて恥をかかなくても、グループで作業をしていく中で自然と見えて来るものです。また、他のグループの発表を聞いていても、悪いところは目につきます。逆に、河瀬氏が挙げていったポジティブな面の方が、意外と自覚なくやっていたり、見過ごしていたりして、そういう視点もあるのだと面白く勉強になりました。
-
演習では、チーム内の話し合いの結果、事業は外科技術教育用の装置となった。これは「現段階チームの各人が担当しているテーマ(認知心理・センサー・生命科学・化学)」「新規性」「お金になる」という条件からで、ペルソナははじめ「自分の卓越した外科技術を後輩に教えたいが、不可能で困っている天才外科医」であった。しかしいざ実際自分がペルソナであった場合、自分がこの装置にお金を払うかと考えるプロセスを経て、「卓越する外科技術の教育に困っている病院」の問題解決手段としての装置を提供するという発想に至り、お客にとっての価値とは、困っていることを解決することであるということを実感することが出来た。
-
お話が面白く、始終興味深く拝聴しました。(中略) 「ユースケースの想定」の演習は、普段気づかない点を洗い出すという点で非常に面白かったです。自分の研究を明確にイメージしているつもりでも実は現実とのギャップが大きい!といったことがわかりました。視野を広く持ち、相手(ユーザー)の立場に立つことの大切さを感じました。その上で、「やってみないとわからない」ことに挑戦していきたいと思います。
-
演習では、自分がどれだけユーザーと乖離した視点から研究・技術を捉えていたのか認識でき、大変良い気づきとなりました。自身の研究ですらユーザー視点にたてなかったこと、改めて見つめ直したいです。
-
イノベーションに関する話を非常にわかりやすく説明してくださり(中略)。 最後に、現在研究している「ポータブル式の高速遺伝子検出装置」を発表しましたが、マーケティングの重要性に改めて気づきました。自分でニーズを考えるだけでなく、実際のユーザーの立場で必要なスペックを考える必要がわかりました。今後、想定されるユーザーにも話を伺い、社会で役に立つ開発を進めていきたいと思います。